屋外広告物の申請と行政書士法|自治体公式サイトに掲載された注意事項を行政書士が解説
はじめに|屋外広告物の申請で「行政書士法」が関係することをご存じですか?
看板を新しく設置したり、既存の看板を変更したりする場合、自治体の屋外広告物条例に基づく許可申請や届出が必要になることがあります。こうした手続きについて、「看板を製作・施工する業者に、申請もまとめてお願いしている」という企業や店舗も少なくありません。
しかし、屋外広告物の許可申請は、単なる看板の製作・施工とは異なり、自治体などの官公署に提出する書類を作成する行政手続きです。実際に、自治体の公式サイトでは、屋外広告物の申請・届出に関連して、行政書士法について注意喚起しているケースがあります。
例えば、京都市は屋外広告物の許可申請に関するページで、行政書士でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類を作成することについて、行政書士法違反となる場合がある旨を明記しています。京都市
また、茨城県は屋外広告物の規制について説明するページに「行政書士法の規定について」という項目を設け、行政書士法第19条第1項を掲載しています。茨城県公式サイト
高知県も、屋外広告物条例に基づく申請・届出様式のページで、行政書士法第19条に基づく注意事項を掲載しています。高知県公式サイト
本記事では、こうした自治体の公式サイトに掲載されている情報を自治体ごとに紹介しながら、屋外広告物の申請と行政書士法の関係について、行政書士の立場から分かりやすく解説します。
第1章 屋外広告物の許可申請と行政書士法の関係
1-1.屋外広告物の設置には行政手続きが必要になる場合があります
屋外広告物は、単に看板を製作して設置すればよいというものではありません。自治体の条例によって、表示・設置できる場所、広告物の大きさ、高さ、色彩、表示方法などについて規制が設けられており、一定の屋外広告物については、設置前に許可申請が必要となります。
例えば京都市では、市内全域を禁止地域、規制区域または屋外広告物等特別規制地区に指定しており、規制区域等で屋外広告物を表示・設置する場合には、設置前に許可申請等の手続きを行う必要があります。京都市
つまり、看板の製作・施工だけでなく、条例に基づく行政手続きまで適切に行うことが必要です。
1-2.看板の製作・施工と行政手続きは同じ業務ではありません
看板業者・サイン工事会社が専門とするのは、例えば次のような業務です。
・ 看板のデザイン
・ 看板の製作
・ 看板の設置・施工
・ 電気工事
・ 看板の修理
・ 看板の点検・メンテナンス
一方、屋外広告物の許可申請では、
・ 申請書類の作成
・ 添付書類の準備
・ 自治体への提出
・ 行政との手続き上のやり取り
・ 許可後の書類管理
・ 更新・変更等の手続き
などが発生します。
そのため、「看板を作れること」と「官公署に提出する申請書類を業として作成できること」は、別の問題として考える必要があります。
第2章 行政書士法第19条とは?
2-1.行政書士法には「業務の制限」が定められています
行政書士法第19条では、行政書士または行政書士法人でない者について、他人の依頼を受け、報酬を得て、行政書士法第1条の3に規定する業務を業として行うことを制限しています。
茨城県は、屋外広告物に関する公式ページにおいて、この行政書士法第19条第1項について直接説明しています。
「行政書士でない方が報酬を得て官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、行政書士法第19条第1項の規定に違反しますのでご注意ください。」
茨城県はさらに、同ページで行政書士法第19条第1項の条文そのものも掲載しています。茨城県公式サイト
2-2.「看板業者が申請に関わったら違法」という単純な話ではありません
ここは特に注意が必要です。
行政書士法との関係を説明する際、「看板業者が屋外広告物申請をしたらすべて違法」と単純に説明することは適切ではありません。
行政書士法上の問題となるかどうかは、例えば、
・ 誰が申請者なのか
・ 誰が書類を作成しているのか
・ 誰から依頼を受けているのか
・ 報酬を得ているのか
・ 業として行っているのか
・ 他の法律による例外に該当するのか
など、具体的な状況によって判断する必要があります。
したがって、本記事では「看板業者=違法」と断定するのではなく、自治体が実際にどのような注意喚起を行っているのかを確認することを重視します。
第3章 自治体公式サイトに掲載されている行政書士法に関する注意事項
ここからは、実際に自治体の公式サイトを確認していきます。
3-1.京都市|屋外広告物の許可申請ページに注意事項を掲載
京都市は「許可申請等の様式」という屋外広告物の許可申請に関するページで、次の注意事項を掲載しています。
「行政書士でない方が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、ご注意ください。」
【京都市公式サイトより引用】
この点は非常に重要です。京都市は、一般的な行政書士制度の説明ページではなく、屋外広告物の許可申請に関するページそのものに行政書士法違反についての注意事項を掲載しています。また、京都市の屋外広告物許可申請の手引きにも、同様の注意事項が掲載されています。
つまり、屋外広告物の申請者に対して、自治体自身が行政書士法との関係について注意を促していることが分かります。
3-2.茨城県|「行政書士法の規定について」という項目を掲載
茨城県は、屋外広告物に関する規制を説明する公式ページに、独立した「行政書士法の規定について」という項目を設けています。そこでは、
「行政書士でない方が報酬を得て官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、行政書士法第19条第1項の規定に違反しますのでご注意ください。」
【茨城県公式サイトより引用】
と明記されています。
さらに、同ページには行政書士法第19条第1項の条文も掲載されています。茨城県公式サイト
茨城県の例は、屋外広告物行政と行政書士法第19条との関係を自治体が明示している事例として、非常に分かりやすいものです。
3-3.高知県|屋外広告物の申請・届出様式ページに明記
高知県では、「申請・届出様式 高知県屋外広告物条例」というページに、行政書士法についての注意事項を掲載しています。
「行政書士法第19条の規定に基づき行政書士又は行政書士法人でない者は、業として報酬を得て申請書等を作成する業務を行うことはできません。」
【高知県公式サイトより引用】
このページには、
・ 許可・更新申請書
・ 完了届
・ 設置者変更届
・ 除却届
などの屋外広告物に関する手続きが掲載されています。
つまり、高知県も実際の屋外広告物の申請・届出を案内するページで行政書士法第19条について注意喚起していることになります。
3-4.福井市|屋外広告物申請書類の案内ページに掲載
福井市も、屋外広告物の申請書類を案内する公式ページに、行政書士法に関する注意事項を掲載しています。
ここでも重要なのは、単に行政書士法を説明しているのではなく、屋外広告物の申請手続きを案内するページに注意事項が掲載されているという点です。
屋外広告物の申請を検討している事業者にとって、申請書類を誰が作成するのかを確認する必要性を示す公的情報の一つといえます。
3-5.さいたま市|屋外広告物の許可申請をする方への注意事項
さいたま市も、屋外広告物の許可申請に関する公式ページで、行政書士法についての注意事項を掲載しています。
〈ご注意〉行政書士でない方が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、ご注意ください。
【さいたま市公式サイトより引用】このように複数の自治体が、屋外広告物の申請手続きに関連して行政書士法への注意を促していることからも、屋外広告物の行政手続きを行う際には、単に「誰に頼めばいいか」だけでなく、「誰が申請書類を作成するのか」を確認することが重要だと分かります。
3-6.大津市|代理人による申請にも注意が必要
大津市については、屋外広告物の手続きを第三者が行う場合の「代理」という観点から確認することができます。屋外広告物の申請を事業者本人ではなく第三者に任せる場合、「誰が代理しているのか」という問題が生じます。
そのため、看板業者などに行政手続きを依頼している場合には、製作・施工業務と行政手続きの業務範囲を明確にしておくことが重要です。
(注)行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、ご注意下さい。また、本人確認のため、申請者本人にご連絡することもありますのでご了承いただきますようお願いします。
【大津市公式サイトより引用】
3-7.相模原市|委任状・代理申請との関係
相模原市でも、屋外広告物の申請に関する委任状・代理申請について確認することができます。
申請者以外の者が手続きを行う場合、委任状が必要になります。
行政書士又は行政書士法人でない者が、 業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、他の法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、ご注意ください。
【相模原市公式サイトより引用】
こうした自治体の案内からも、屋外広告物の手続きについて第三者が関与する場合には、単に「業者に任せている」というだけでなく、どの業務を誰が担当しているのかを整理することが重要だと分かります。
3-8.倉敷市|屋外広告物申請と行政書士法
倉敷市も屋外広告物の申請関係ページに行政書士法に関する注意事項を掲載しています。
行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、法の趣旨をご理解いただき、申請をお願いします。
行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)が令和7年6月13日に公布され、令和8年1月1日に施行されました。この改正により、業務の制限規定の趣旨が明確になっています。
【倉敷市公式サイトより引用】
このように、複数の自治体がそれぞれの屋外広告物制度の中で行政書士法について注意喚起している点は、企業が屋外広告物の申請体制を考えるうえで注目すべきポイントです。
3-9.その他自治体
他にも以下のような自治体が屋外広告物申請と行政書士法に関する注意事項を掲載しています。
北海道|代理人による許可申請等について
許可等を受けようとする方が代理人を指定し、申請書等の提出を行なう場合は、申請書等の「出願者」欄の氏名の下に代理人の住所及び氏名を記載のうえ、委任事項を明示した委任状を提出してください。
なお、行政書士または行政書士法人でない方が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますのでご注意ください。
【北海道公式サイトより引用】
龍ヶ崎市(茨城県)|行政書士法の規定について
行政書士でない方が報酬を得て官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、行政書士法第19条第1項の規定に違反しますのでご注意ください。
(参考)
行政書士法(昭和二十六年法律第四号)
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
【龍ヶ崎市公式サイトより引用】
群馬県|代理業務について
※報酬を得て、本代理業務を行うことができるのは行政書士のみです。
【群馬県公式サイトより引用】
石川県|屋外広告物の掲出に関する手続きについて
【ご注意】
行政書士でない方が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、ご注意ください。
【石川県公式サイトより引用】
静岡県|屋外広告物の許可申請をする方への注意事項
行政書士でない方が、報酬を得て官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、法律に別段の定めがある場合を除き、行政書士法違反となりますので、御注意ください。
(「業とする」とは、反復継続の意思をもって書類作成を行うことと解されています。)
【静岡県公式サイトより引用】
伊豆の国市(静岡県)|反復継続の意思をもって書類作成を行うこと
≪ご注意≫行政書士でない方が、報酬を得て官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、法律に別段の定めが ある場合を除き、行政書士法違反となりますのでご注意ください。 (「業とする」とは、反復継続の意思をもって書類作成を行うことと解されています。)
【屋外広告物許可期間更新の手続き資料より引用】
滋賀県|代理人の資格について
注:行政書士等により代理人が申請する場合は、第1面の「代理人」欄を記入の上、代理人の資格を証する書類(委任状等)を添付してください。電子申請の場合は、申請フォーム内に電子データにて添付してください。
【滋賀県公式サイトより引用】
豊中市(大阪府)|有資格者による代理申請について
申請者以外で有資格者である行政書士などの方が代理で申請をされる場合は委任状が必要です。
【豊中市公式サイトより引用】
高知県|行政書士法の規定について
行政書士法第19条の規定に基づき行政書士又は行政書士法人でない者は、業として報酬を得て申請書等を作成する業務を行うことはできません。
【高知県公式サイトより引用】
第4章 自治体の公式サイトに共通しているポイント
ここまで自治体ごとの記載を紹介してきました。自治体によって文章や掲載場所は異なりますが、共通しているポイントがあります。
4-1.「行政書士でない者」に対する注意喚起
複数の自治体が、行政書士でない者が報酬を得て官公署提出書類を業として作成することについて注意喚起しています。
4-2.「報酬を得て」「業として」という点が重要
単発的な手伝いや、単なる情報提供などをすべて行政書士法違反とするものではありません。
行政書士法上の問題を考える場合には、報酬性・業務性・書類作成の内容などを具体的に確認する必要があります。
4-3.屋外広告物の申請ページに掲載されている
今回確認した自治体の中には、行政書士法の一般的な説明ページではなく、「屋外広告物の許可申請・届出をする人に向けたページ」に注意事項を掲載している自治体があります。
これは、屋外広告物の申請を行う事業者にとって重要な情報です。
第5章 「看板業者が申請してはいけない」という意味ではありません
ここは誤解のないように、明確にしておく必要があります。
屋外広告物の申請について行政書士法との関係が問題になるからといって、「看板業者は行政手続きに一切関わってはいけない」という意味ではありません。
▶ 関連記事:看板業者・サイン工事会社向け|屋外広告物許可申請を行政書士へ外注しませんか?
看板業者は、
・ 看板の企画
・ デザイン
・ 製作
・ 施工
・ 修理
・ 点検
・ メンテナンス
などについて専門的な知識と経験を持っています。
一方、行政書士は、
・ 許認可申請
・ 官公署提出書類の作成
・ 行政手続きの代理
・ 自治体との手続き上のやり取り
など、行政手続きを専門としています。
したがって、看板の専門家と行政手続きの専門家が、それぞれの専門分野を担当するという考え方が重要です。看板工事会社・サイン会社が、行政書士と適切に役割分担しながら業務を行う方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 関連記事:「看板工事会社と行政書士の適正な業務分担・業務提携について」
第6章 企業が屋外広告物の申請を依頼するときに確認すべきこと
企業や店舗が屋外広告物の申請を外部へ依頼する場合は、次の点を確認しておくと安心です。
① 誰が申請書類を作成するのか
単に「申請もやります」という説明だけではなく、実際に申請書類を作成する者を確認しましょう。
② 誰が自治体へ提出するのか
申請書類の作成だけでなく、自治体への提出や行政とのやり取りを誰が担当するのかも確認します。
③ 看板製作・施工と行政手続きを分けて考える
看板業者には製作・施工を依頼し、行政手続きについては行政書士に依頼するという役割分担も可能です。
④ 複数店舗の場合は本部で管理する
全国展開・多店舗展開を行う企業の場合、店舗ごとに個別対応するのではなく、
・ 許可状況
・ 許可期限
・ 更新時期
・ 設置場所
・ 看板の種類
・ 施工業者
・ 申請担当者
などを本部で管理する体制も重要です。
▶︎ 関連記事:全国・多店舗展開企業の屋外広告物許可申請についてはこちら
第7章 多店舗・全国展開企業は「申請をしたら終わり」ではありません
特にチェーン企業や全国に店舗を展開する企業では、屋外広告物の行政手続きを一店舗ごとの問題として捉えるだけでは十分ではありません。
店舗数が増えるほど、
「この店舗の看板は許可を取得しているのか?」
「許可期限はいつなのか?」
「更新手続きは済んでいるのか?」
「看板を変更した場合、変更申請は必要なのか?」
といった管理が必要になります。
そのため、全国・多店舗展開企業では、屋外広告物の許可申請を本部で一元的に管理する体制を構築することが、コンプライアンス上も重要になります。
👉 全国・多店舗展開企業向けの屋外広告物許可申請については、こちらの記事もご覧ください。
第8章 まとめ|屋外広告物の申請では「誰が手続きを行うのか」を確認することが重要
屋外広告物の許可申請については、自治体ごとに条例や手続きが異なります。その一方で、今回紹介したように、京都市、茨城県、高知県など、複数の自治体が屋外広告物の申請・届出に関連して行政書士法について注意喚起しています。京都市
特に茨城県では、屋外広告物に関するページに「行政書士法の規定について」という項目を設け、行政書士法第19条第1項を明記しています。茨城県公式サイト
こうした情報からも、屋外広告物の申請を外部へ依頼する際には、「誰に依頼するか」だけではなく、「誰が申請書類を作成し、どのような立場で行政手続きを行うのか」を確認することが重要です。
看板の製作・施工は看板の専門家へ、行政手続きは行政手続きの専門家へ。
それぞれの専門性を適切に活用することが、屋外広告物に関する企業のコンプライアンスを守るうえでも重要なポイントとなります。
▶︎ 関連記事:屋外広告物条例違反になるとどうなる?
屋外広告物許可申請について行政書士へ相談する
「現在、看板業者に屋外広告物の申請を任せているが、手続きが適切なのか確認したい」
「新しく店舗を出店するため、看板の許可申請が必要か確認したい」
「全国の店舗の屋外広告物許可をまとめて管理したい」
「看板の製作・施工と行政手続きを適切に分けたい」
このような場合は、屋外広告物許可申請を専門とする行政書士へご相談ください。
行政書士・福井法務事務所では、屋外広告物に関する許可申請について、自治体ごとの条例・基準を確認したうえで、申請書類の作成から許可取得までサポートしています。
まずはお気軽にご相談ください
